サプリメントの効果と害

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神経管閉鎖障害予防には葉酸を

 

 早いもので、あっという間に12月に突入しました。

 繁忙期になると、なかなかブログに手が伸びなくなります。時間がなくなると、日々のふりかえりとその記録がつらくなってきます。ふりかえり手帳も飛ぶように白紙のページが。悪循環に入らないよう、仕事をさらに効率よく進めていきたいと思います。

 

NTDの発生頻度は?

 

 さて、今回は神経管閉鎖障害(neural tube defects, NTD)について。まずは、どのくらいの頻度でおこるものでしょうか?

 

 これはどのように統計がとられているのかわかりませんでしたので、Google検索しました。平成12年(2000年)の厚生省児童家庭局母子保健課長及び厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課生活習慣病対策室長からの通知のなかに記載がありました。

神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について *1

 

 我が国においては、諸外国と比較して、二分脊椎の発症率が低いこと等の理由から、これまで関連する疫学調査はほとんど行われておらず、また、神経管閉鎖障害のリスク低減のための葉酸の利用について特段の対応は行われてこなかった。

 しかしながら、平成11年に報告された神経管閉鎖障害の発症率が低い中国南部における研究においても、葉酸の摂取が神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるとの調査結果が示されたこと、平成11年度の厚生科学研究において、我が国の二分脊椎の発症率が増加傾向にあることが報告されたこと、さらに今後、食生活の多様化により、食物摂取の個人格差が大きくなり、葉酸摂取が不十分な者が増加する懸念もあること等から、我が国の現状を踏まえた葉酸の摂取による神経管閉鎖障害の発症リスクの可能性について検討する必要性が生じてきた。

 

 当初は発症が少ないとの理由で、疫学調査はされてこなかった、とあります。発生頻度はそのあとに記載があります。

2 神経管閉鎖障害について

 

 神経管閉鎖障害は、主に、先天性の脳や脊椎の癒合不全のことをいう。脊椎の癒合不全を二分脊椎といい、生まれたときに、腰部の中央に腫瘤があるものが最も多い。また、脳に腫瘤のある脳瘤や脳の発育ができない無脳症などがある。

 我が国において神経管閉鎖障害の発症率は、1998年で出産(死産を含む)1万人対6.0、うち二分脊椎は3.2程度とされている。

 

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ローヤルゼリーにはどんな効果があるか?

 

 ローヤルゼリーは、サプリメントの中でもよく使われるもののようです。いかにも効果がありそうな宣伝がなされていますが、実際に効果は検証されているのでしょうか。調べてみました。

 

意外にも研究が少ない

 

 これほど普及しているわりに医学論文は少なく、質の高い臨床研究はほとんど見つかりませんでした。PubMed Clinical Queriesでは、このような結果でした。

f:id:cometlog:20140921160653p:plain

 

 Therapy/Narrowで検索し、Humansの絞り込みをしていますが、たった8件のみ。

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ω-3脂肪酸、またも残念な結果に

総死亡、心血管死亡ではプラセボと差がない

 

 DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)といえば、サプリメントの代表格のような成分ではないでしょうか。これらを含むω-3脂肪酸(オメガ-3しぼうさん)の効果を検証した多くの研究では、これまで惨憺たる結果となっていました。

 

 特に、真のアウトカムとよばれる総死亡・心血管死亡について検証したランダム化比較試験のメタ分析 *1 *2 *3 *4 では、ことごとく、プラセボ有意差なしという結論になっています。

 

 これらは、最近報告されたものばかりです。臨床的効果があるのかどうかは、こうした研究が長年積み重ねられて、はじめてわかってくるものです。

 

サプリメントなのだから、そんなに効果があるわけがなかろう」という意見であれば、そのとおりだと思います。過大な期待は禁物なのです。

 

 そして、今年になって、またひとつ残念な結果が報じられていますので、ご紹介しておきます。

メタ分析(Zhang、2014年) *5

  • P▶ 冠動脈疾患の既往があるなどリスクの高い成人に
  • E▶ ω-3脂肪酸を投与すると
  • C▶ プラセボまたは他の治療に比べて
  • O▶ がん発症、非心血管死亡、総死亡は少なくなるか
  • T▶ 治療、メタ分析
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ビタミンDについて知っておくべきたったひとつの効果

ビタミンDは骨にいい?

 

 ビタミンDについて、いくつか医学論文を紹介してきました。ちょっと忘れかけていますが、過去記事をご参照ください。

  • 65歳以上のビタミンD単独投与では、股関節骨折予防効果は期待できない。*1
  • 閉経後の女性に対しては、ビタミンDの骨折予防効果は認められていない。*2

 

 ビタミンDは骨にいいというイメージがついていますが、残念な結果となっていました。

 骨には大した効果がないとすれば、ビタミンDには他に何か取り柄はあるのでしょうか?もう少し調べてみることにしました。

 

実はビタミンDには優れた効果が?

 

 ビタミンDと死亡率の関係を検討したメタ分析がいくつもあります。代表的なものをみておきましょう。

メタ分析(Bjelakovic, 2014年) *3

  • P▶ 成人に
  • E▶ ビタミンDを投与すると
  • C▶ プラセボに比べて
  • O▶ 死亡は少ないか
  • T▶ 治療、メタ分析
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ビタミンDに骨折予防効果はあるのか?

ビタミンDには骨折予防効果はない

 

 ビタミンDに関するコクランのメタ分析が出ています。以前の記事*1でも2009年のメタ分析を紹介していますが、更新されましたので、あらためて見ておきましょう。

メタ分析(Avenell, 2014年) *2

  • P▶ 閉経後の女性または高齢の男性(平均または中央値が65歳以上)に
  • E▶ ビタミンDまたは関連化合物を投与すると
  • C▶ プラセボに比べて
  • O▶ 股関節の骨折は少ないか
  • T▶ 治療、メタ分析
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ビタミンDで骨は強くなりますか?

 

 ビタミンDについて調べていたところ、タイムリーにもthe Lancet誌今週号にメタ分析が掲載されていましたので、ご紹介したいと思います。

 その前に、これまでのビタミンDの位置づけについて、確認しておきます。

 

ビタミンDに対するこれまでの評価

 

 ビタミンD骨粗しょう症の予防や治療として使われてきました。また、サプリメントとしても広く利用されているようです。

 しかし近年、ビタミンDには骨折予防効果が認められないとする研究が相次いで報告されています。代表的なものとしては、こちらのメタ分析があります。

Avenell A, Gillespie WJ, Gillespie LD, O'Connell D. Vitamin D and vitamin D analogues for preventing fractures associated with involutional and post-menopausal osteoporosis. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Apr 15;(2):CD000227. doi: 10.1002/14651858.CD000227.pub3. Review. PubMed PMID: 19370554.

  論文要約はこちらをご参考に。

CMEC-TV/ ビタミンDをとると、骨折を予防できるでしょうか?

 

 カルシウムを併用しないビタミンD単独ではむしろ骨折が多くなっていたという結果です。

 

 また、カルシウムとビタミンDで心血管疾患が多いという気になる報告もあります。

Bolland MJ, Grey A, Avenell A, Gamble GD, Reid IR. Calcium supplements with or without vitamin D and risk of cardiovascular events: reanalysis of the Women's Health Initiative limited access dataset and meta-analysis. BMJ. 2011 Apr 19;342:d2040. doi: 10.1136/bmj.d2040. Review. PubMed PMID: 21505219; PubMed Central PMCID: PMC3079822.

 

 最近の報告から、ビタミンDの効果は懐疑的な流れとなっているように感じます。

 せめて(これまでビタミンDの効果の根拠となっていた)、骨密度については効果がありますよね?という疑問を、今回のメタ分析では確認されています。

 

まさか骨密度までも?

 

 ご紹介するメタ分析はこちら。 骨密度を検討していますので、代用アウトカムの研究です。

メタ分析(2014年)

Reid IR, Bolland MJ, Grey A. Effects of vitamin D supplements on bone mineral density: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2013 Oct 10. pii: S0140-6736(13)61647-5. doi: 10.1016/S0140-6736(13)61647-5. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 24119980.

  • P▶ 成人(平均20歳以上)に対して
  • E▶ ビタミンDを投与すると
  • C▶ プラセボに比べて
  • O▶ 骨密度のベースラインからの変化割合は少ないか
  • T▶ 治療、ランダム化比較試験のメタ分析
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夜泣きに効く治療はないですか?

  「夜泣きに自宅でできるような治療や対処方法はないのでしょうか?」

  外来で聞かれました。さっそくUpToDateで「夜泣き」と検索。

"夜泣き (nocturnal crying)"

  日本語検索機能では、夜尿症やらのトピックが検索されるだけで、夜泣きのトピックは検索されませんでした。流石のUpToDateも夜泣きはなかったか・・・と思いながら、「夜泣き」の用語検索すると・・・infantile colicですよね。

  ふたたびUpToDateに「infantile colic」と入力すると、ありました。日本語訳違いですね。

Turner TL, Palamountain S. Evaluation and management of colic. In: UpToDate, Basow, DS (Ed), UpToDate, Waltham, MA, 2012.  
Overview — Colic typically stops as mysteriously as it starts. Symptoms resolve in 60 percent of infants by three months of age and 80 to 90 percent of infants by four months of age [5].
<略>
Although the evidence for specific management strategies may be provided by randomized controlled trials, many of these trials have methodologic weaknesses (eg, were not adequately blinded).
<略>
The interventions may be categorized according to the available evidence as follows [7,8]:
Likely to be beneficial – whey hydrolysate milk
Likely to be beneficial but with unacceptable risks – anticholinergic drugs
Unknown effectiveness – soy milk, casein hydrolysate milk, low-lactose milk, low-allergen diet by breastfeeding mothers, sucrose, herbal tea, reduced stimulation
Unlikely to be beneficial – lactase, simethicone, increased carrying

  UpToDateによると、60%は生後3か月までに、80-90%は4か月までにおさまるとのこと。乳清加水分解乳は効果があるかもしれない、抗コリン薬は効果があるかもしれないがリスクがある、といった記載があります。

  さらに、PubMed Clinical Queries検索すると、2011年のPediatricsにsystematic reviewが発表されていました。

Perry R, Hunt K, Ernst E. Nutritional supplements and other complementary medicines for infantile colic: a systematic review. Pediatrics. 2011Apr;127(4):720-33. Epub 2011 Mar 28. Review. PubMed PMID: 21444591.
■夜泣きのみられる乳児に
サプリメント代替療法を行うと
■治療なしまたはプラセボまたは他の治療と比べて
■主観的な夜泣きの程度は改善するか
■治療、システマティックレビュー 
■結果[※※※]
論文の質が高くはなく、結論が分かれているものが多いが、fennel extract, mixed herbal tea, and sugar solutionsについては、効果が期待できる可能性がある。今後の検証に期待。

  残念ながら、質の高い研究で効果が立証された治療はないようですが、fennel extract(ウイキョウエキス)、ハーブ茶、糖類などについては効果が期待できる可能性もあります。

  どうしてもお困りなら・・・でも、乳児に与えるのにはちょっと心配ですね。

※詳細は原著論文をご参照ください。